デジタル時代と言われる現代は、動画の時代です。映画やテレビ番組などの映像作品に限らず、ビジネスで用いられるプロモーション資料やセミナー資料、また教育分野のコンテンツや、その他ありとあらゆるインターネットコンテンツに今は動画が使われることがほとんどです。こうした時代の流れに伴い、動画/映像の翻訳の需要はこれまで以上に高まっています。
さまざまな映像コンテンツの音声を翻訳することを映像翻訳と呼びますが、その手法には主に字幕翻訳、吹替翻訳、ボイスオーバーがあります。今回はその中の字幕翻訳についてお伝えしていきます。
字幕翻訳とは
字幕翻訳とは、映像の音声をそのまま残し、映像内に音声を翻訳したテキストを表示させる方法です。視聴者は映像と同時に字幕を目で追う必要があります。そのため、字幕翻訳は短時間で無理なく読むことができるよう、「1秒間に4文字」「1行の文字数は13字程度まで」「行数は2行まで」といった原則に従う必要があります。
作業の流れ
では次に、実際の字幕翻訳の作業の流れを見ていきましょう。
- 素材の確認
映像と音声のファイルを受け取り、不備がないか確認する。 - 音声の書き起こし
音声データのままでは翻訳できないので、書き起こしデータを作成する。 - 区切り作業
一画面に表示されるのに適当な長さに、書き起こしを区切る。 - 翻訳
決められた制限字数内で翻訳する。 - 字幕入れ
映像に翻訳を入れ込み、音声と字幕のタイミングなどを調整する。
字幕翻訳には、上記のように、純粋な翻訳以外にもさまざまなプロセスがあることがおわかりいただけたでしょうか。この他にも、翻訳チェッカーやクライアントによるチェック作業が入ります。
字幕翻訳のポイント
クオリティの高い字幕翻訳を作成するにはさまざまなポイントがありますが、まず基本になるのは、「タイミングに合った、短時間で読めるわかりやすい字幕であること」。そのため字幕を手掛ける翻訳者には、「原語の意図を保ちながら、的確に要約する能力」が求められます。限られた文字数の中で原語のニュアンスを表現する必要があるので、言語に関する高い理解力と表現力の両方が求められるのです。
また、例えば英語から日本語への翻訳を例に取ると、この二つの言語では語順が違うため、短く区切られた原語をそのまま訳したのでは全体として意味が通らなくなります。したがって、文章をかたまりごとに訳し、それを適切な場所で区切っていく工夫が必要になります。
さらに、映像作品などの場合はしばしば、文化的な背景を十分に深く理解した上で、原語の伝えたいことを損なうことなく訳す必要があります。そのためには翻訳元の言語圏のカルチャーや流行、ジョークなどにも精通し、かつそれを違和感なく翻訳で表現するという高度な技術が要るのです。
例)
◆原文:I’ve downloaded the Sleep Watch app on my Apple Watch and have been monitoring the quality of my sleep and getting credible tips on how to improve it.
◆通常の翻訳:私はApple Watchに「Sleep Watch」というアプリをダウンロードして、睡眠の質をモニタリングするとともに、質を改善するための信頼できるデータを入手しています。
◆字幕翻訳:
私はApple Watchのアプリで
睡眠の質をチェックして
データを活用した
質の改善に取り組んでいます
字幕翻訳の今後
昨今では機械翻訳の性能が急速に上がりつつあり、字幕翻訳もその影響は少なからず受けることになるでしょう。
しかし通常の翻訳と違って、字幕翻訳は全体の内容や文脈、ときには他の文化までを十分に深く理解した上で、適切な言い換えや要約、場合によって創造的な意訳をして、限られた字数内で原文の意味を損なうことなく伝えなければなりません。こうした技術はまだまだ機会翻訳では及ばず、やはり人間ならではの能力が必要とされる領域だろうと思います。
字幕のプロセスは基本的に、外国語から日本語も、その逆も同じです。質の高い字幕翻訳をつけることができれば、世界のコンテンツを内外双方向に展開することができ、ビジネスの幅がぐっと広がります。そしてその際に必要なのは、言語の翻訳だけでなく、これまでに述べてきたような複合的な要素を十分に考慮したローカリゼーションです。今後の翻訳市場においては、そうした包括的な字幕翻訳の技術とローカリゼーションの専門性がこれまで以上に必要とされ、また強みとなっていくでしょう。
modisでは、上記のような専門性を持った翻訳者と経験豊富なローカライズチームが、多言語の映像プロジェクト(字幕翻訳、吹き替え翻訳、ボイスオーバー)に対応いたします。映像翻訳をご検討の際には、ぜひお気軽にご連絡ください。