コーポレートコミュニケーションは、企業の価値を高めてブランドイメージを向上させる重要な広報活動です。この記事では、コーポレートコミュニケーションの意味から目的、具体的な実施方法まで詳しく解説します。実施にあたって注意するポイントを押さえて、コーポレートコミュニケーションで企業の知名度アップを実現させましょう。
目次
コーポレートコミュニケーションとは?
コーポレートコミュニケーション(Corporate Communication)とは、企業の社内外に向けて情報を発信する広報活動です。日本語では「企業広報」と呼ばれています。
社内外の広報先には取引先や顧客、従業員、株主、金融機関、地域社会などがあります。これらの企業と利害関係を持つ人、組織をステークホルダーと呼びます。企業がステークホルダーに向けて広報を行うことは、企業全体のイメージ向上や信頼の構築につながります。
また、コーポレートコミュニケーションは多言語でコーポレート広報を行うことで、海外展開において重要な役割を果たす活動です。現地の文化や市場に適応した効果的な情報発信を行うことで、グローバル展開において競争優位性を確保することが可能です。

コーポレートコミュニケーションを行う目的
コーポレートコミュニケーションを行う目的は、社内外のステークホルダーに対して情報発信し、企業価値を高めることです。その目的の範囲には、ブランドイメージのような大きな視点から、従業員のエンゲージメントといった身近な視点まで幅広く含まれます。ここでは、それぞれの目的について具体例を交えながら解説します。
ブランドイメージの向上
企業のブランドイメージを向上させることは、市場における認知度や競争力を高めることにつながります。
たとえば、環境問題やSDGsへの取り組み、サステナブルな社会の実現に向けた施策の情報発信を行うことで、企業の信頼感を高められます。また、発信情報に一貫性を持たせることでブランド価値をより強固にし、ステークホルダーに対して強い印象を与えることが可能です。環境への取り組みを通じてブランドの評判を向上させた企業の例として、パタゴニアの環境保護活動が挙げられます。
ステークホルダーとの信頼関係の構築
コーポレートコミュニケーションは、ステークホルダーとの信頼関係を築く重要な手段です。
たとえば、取引先や株主に向けて透明性の高い情報を提供することで、大きな信頼を得られます。近年ではSNSを通じて、顧客が直接企業アカウントとコミュニケーションをとることで、信頼関係を築いていく事例もあります。透明性を高めることでステークホルダーの信頼を獲得した企業として、ユニリーバのサステナビリティレポートや、テスラのSNSを活用した顧客との直接的な対話が参考になります。
組織内部のコミュニケーション強化
組織内部のコミュニケーションを強化することで、社内の連携を高めて効率的な業務を実現できます。
たとえば、社内のチャットツールを通じて、経営陣から定期的に経営方針を発信することで、組織全体に一体感が生まれます。またデジタルサイネージといって、従業員の投稿を1つのスクリーンにまとめて表示し共有しあうことも効果的です。このような取り組みも、コーポレートコミュニケーションの一環です。企業の成長において、活発なコミュニケーションと一体感は必要不可欠といえます。MicrosoftがYammerを活用して社内のコラボレーションを促進した例や、Zapposのオープンなコミュニケーション文化などが好例です。
従業員のエンゲージメント向上
従業員のエンゲージメントを向上することは、従業員のモチベーションを高めて、生産性の向上や離職率の低下につながります。
具体的には、社内で表彰制度を設けて、企業ブランドの模範となるような従業員を表彰します。表彰された従業員は自分の仕事に誇りを持ち、より企業に尽くすようになります。また、その評価を見た従業員は明確な目標が生まれて、やりがいを感じながら働くことができます。
従業員自らがスキルアップしようという気持ちを持つことは、企業の発展に重要なポイントです。GoogleやSalesforceが実施している従業員表彰制度は、モチベーション向上のための例として参考になります。
市場競争優位性の確保
コーポレートコミュニケーションは、市場競争優位性の確保につながります。たとえば、プレスリリースやイベント活動で企業の新しいサービスや技術を公表することは、市場において効果的なコーポレートPRになります。これは同業他社に明確な差別化を図ることと、顧客の興味を引く役割があります。またイベント活動は、顧客が企業とコミュニケーションを行える貴重な場でもあります。たとえば、Appleは製品発表イベントを実施してメディアの注目を集めて競合との差別化を図っています。

コーポレートコミュニケーションの具体的な実施方法
コーポレートコミュニケーションにはさまざまな方法があります。それは新規顧客に向けた広報活動であったり、ステークホルダーに向けた信頼構築であったりと、それぞれ目的が異なります。そのため、目的に応じた情報発信を行い、コーポレートコミュニケーションの効果を最大限に引き出すことが重要です。
ここでは、コーポレートコミュニケーションの具体的な実施方法について解説します。
1. PR・広告
PRや広告は、コーポレートコミュニケーションの中でも中心的な役割を持つ手段です。企業が新製品・サービスの発表や社会貢献活動を、プレスリリースを通じて公表することで、メディアに広く取り上げられて、ブランドの認知を高められます。
また、テレビCMやネット広告を活用すると、特定のターゲット層に絞ったより効果的なマーケティングが可能です。ユーザーの趣味嗜好や行動データに基づいた広告は、ユーザーの興味を刺激し、商品やサービスへの関心を高める効果が期待できます。たとえば、Nikeのマーケティングキャンペーンのように、感情に訴えるストーリーテリングとデジタル広告を組み合わせた手法はとても効果的です。
PRと広告を組み合わせることで、新規顧客の開拓とブランドの認知向上の双方を満たされるため、企業の成長の大きな支えとなります。
2. イベント活動
イベント活動は、ステークホルダーと企業のコミュニケーションを深める場として最適です。新製品・新サービスの展示会や企業のセミナーは、実際に対面でコミュニケーションがとれる貴重な場です。イベント活動ではセミナーで多くの人に企業のことを知ってもらったり、実際に製品を手に取ってもらって体験してもらったりと、さまざまな手段を用いることが可能です。たとえば、CES(Consumer Electronics Show)のような大規模な展示会で、テクノロジー企業が新製品を発表し、ブランド認知度を高めています。
また、バナースタンドで視覚的に興味を引くことで、その会場内でより多くの来場者にコーポレートコミュニケーションを実現できます。ブースに来場した方に社内パンフレットやキャンペーングッズを渡し、イベント活動を1つの体験として持ち帰ってもらうことも、ステークホルダーに強い印象を与える効果があります。
3. コーポレートサイトの活用
コーポレートサイトは、企業の基本情報を外部に広く伝えるための公式Webサイトです。コーポレートサイトに掲載する企業情報は、企業理念や沿革といった企業風土がわかる情報から、事業内容や業績といった具体的な内容まで幅広いです。
コーポレートサイトを活用することで、主に投資家や求職者に企業広報を行えます。たとえば、IR情報に財務状況や経営戦略を公開すれば、投資家に強くPRできます。また、採用情報に社内従業員の声や年収、残業時間、福利厚生といった詳細な募集要項を掲示することで、求職者からの信頼を獲得し、よりよい人材の確保につなげられます。
コーポレートサイトでは企業コラムを定期的に発信することで、潜在的な新規顧客を開拓できます。そのためには、検索エンジンを最適化するSEOと呼ばれる施策が必要です。
また、多言語でコーポレートサイトを構築すれば、海外展開におけるブランドイメージの確立も容易です。多言語のコーポレートサイトでは、現地の文化や価値観に即した情報発信を心がけなければなりません。地域特有のニーズやトレンドに上手く応えることで、海外市場においても競争の差別化を図れます。参考事例として、 IBMのウェブサイトは、企業の価値観、投資家向け情報、採用情報などを効果的に発信しています。

コーポレートコミュニケーションを実施する際のポイント
コーポレートコミュニケーションを成功させ、企業を成長に導くためには明確な戦略と正確な情報発信が重要です。ステークホルダーは取引先や顧客、従業員、株主、金融機関、地域社会と、それぞれに適切なコーポレートコミュニケーションが求められます。また、情報の正確さも重要です。
ここでは、コーポレートコミュニケーションを実施する際のポイントを解説します。
目標設定と戦略策定を明確にする
コーポレートコミュニケーションには、具体的な目標設定が必要です。なぜなら、新商品の認知を向上させたいのか、企業のブランドイメージを向上させたいのかで、それぞれ戦略が異なるためです。目標が曖昧なままでコーポレートコミュニケーションを進めると、伝えたいことが分散して各ステークホルダーに向けて効率的な効果が期待できません。
目標設定には、具体的な数値を明確にすることが重要です。広告のクリック率やイベントの来場者数を設定し、それに向けて戦略を策定します。明確な目標があると企画の段階で迷ったときにその案は目標設定の達成につながるのか、という視点で物事が見られるためスムーズに企画を立てられます。また、目標に対しどこまでの効果が見込めたかも可視化されることで、改善案も立てやすくなります。
ブランドのメッセージングを一貫させる
企業がコーポレートコミュニケーションで発信するブランドのメッセージングは、一貫性を持たせることが重要です。特に多様なチャネルを用いて企業情報を発信する場合は、それぞれのメッセージングにブレが生じるとステークホルダーに不信感を抱かせてしまいます。
たとえば、プレスリリースで環境に配慮した活動を公表する一方で、環境に悪影響を与える商品の広告がウェブ上で配信されていたら、混乱を招きます。
また、一貫させるのは情報だけではありません。デザインにおいても企業のブランドイメージを損ねないために、一貫性を持たせる必要があります。コーポレートサイト、イベント会場、広告のそれぞれで、イメージカラーやコピーの言葉遣いを整えることでブランドの認知向上につながります。
海外展開を踏まえて、多言語のコーポレートサイトを持つときにも、この考え方は重要です。それぞれの地域の文化に配慮しつつ、メッセージングはブレさせないという細やかな対応が、ブランド価値をより強固なものにします。
チャネルの選択に注意する
コーポレートコミュニケーションを成功させるには、適切なチャネルを選択することが重要です。取引先、顧客、従業員、投資家といった各ステークホルダーによって、必要な企業広報の方法は異なります。
たとえば、投資家に向けてはコーポレートサイトによるIR情報の提供が効果的です。また、一般消費者による顧客に向けては、PRや広告を組み合わせて広くメディアに取り上げられることが必要です。若年層に向けてなら、SNSの企業アカウントによる企業広報活動やSNS広告も効果的でしょう。
これらチャネルの選択には、企業の予算やターゲット層を十分に吟味した上で決めなければなりません。
フィードバックの収集と評価改善を行う
コーポレートコミュニケーションを効果的に進めていくうえで、その取り組みに対するフィードバックを収集し、それを生かした評価改善が必要です。
たとえば、ステークホルダーからの意見を回収するためにアンケートを取る方法があります。イベント会場で実際に紙を渡して書いてもらったり、QRコードを用いてオンラインアンケートへ誘導したりと方法はさまざまです。アンケートのデータが多ければ統計を取ることで、取り組みに対する効果がどの程度届いているのかを可視化できます。これらの統計から、効果が薄いと感じられた内容に対して、具体的な改善案を立てて次の戦略に活かしていけば、コーポレートコミュニケーションの質は高くなっていきます。
ちなみにネット広告なら、詳細なエンゲージデータを参照できるため、フィードバックの収集は簡単です。

まとめ
コーポレートコミュニケーションは、企業が社内外のステークホルダーと良好な関係を築くための重要な広報活動です。コーポレートコミュニケーションの種類には、主にPR・広告、イベント活動、コーポレートサイトの活用があります。これらの中から目的に沿った適切なチャネルを選択し、戦略を立てることが基本です。また、ブランドのメッセージングに一貫性を持たせることは、ステークホルダーからの信頼獲得とブランドの認知向上につながります。
海外展開にも、コーポレートコミュニケーションは活用できます。多言語のコーポレートサイトを立ち上げ、地域特有のニーズや文化に対応すれば、グローバル市場においても競争優位性を確保することが可能です。当社では、国内外の多くの企業に対して、企業の課題や目的に合わせて柔軟にコーポレートコミュニケーションのサポートを行なっています。少しでもご興味がございましたら、お気軽にお問い合わせください。