多くの日本企業が「日本語のデザインをそのまま英語に差し替える」という手法で海外市場に挑み、苦戦を強いられています。なぜ、優れた翻訳を載せているはずなのに、海外のユーザーには「どこか素人っぽい」「信頼しにくい」と感じられてしまうのでしょうか。
本記事では、グローバルスタンダードな英語デザイン制作を実現するために不可欠な3つの基本原則と、プロが実践する具体的なレイアウト術を徹底解説します。
目次
- デザインは「翻訳」ではなく「ローカライズ」が必要な理由
- 原則1:タイポグラフィの深淵――フォントはブランドの「声」である
- 原則2:テキストボリュームの膨張を制御する「スペース設計」
- 原則3:視覚的階層の構築
- 実践テクニック:余白を「贅沢」に使う
- 成功する英語デザインプロジェクトの進め方
- まとめ
デザインは「翻訳」ではなく「ローカライズ」が必要な理由
日本語と英語は、言語としての構造が根本的に異なります。日本語は、漢字・ひらがな・カタカナという3種類の文字を組み合わせ、情報の密度を高く保つことができる高コンテクストな視覚言語です。一方、英語は26文字のアルファベットの組み合わせであり、文字そのものが持つリズムや、単語間のスペースがデザインの大きな要素となる低コンテクストな言語です。
この違いを無視してレイアウトを固定したまま文字だけを入れ替えると、情報の優先順位が崩れ、ブランドのメッセージが正確に伝わらなくなります。英語デザイン制作において重要なのは、翻訳されたテキストを流し込むことではなく、英語圏のユーザーの視線誘導や心理に合わせた再構築なのです。
原則1:タイポグラフィの深淵――フォントはブランドの「声」である
欧米のデザイン文化において、タイポグラフィ(文字のデザイン)は、日本人が想像する以上に雄弁です。フォントの選択ひとつで、その企業が伝統ある老舗なのか革新的なテック企業なのかを瞬時に判断されます。
セリフ体とサンセリフ体の戦略的使い分け
セリフ体(Serif): 文字の端に飾り(ウロコ)がある書体です。Times New RomanやGaramondなどが代表的です。「信頼」「権威」「伝統」「エレガンス」を象徴し、法律事務所、高級ブランド、あるいはB2B企業の重厚な広報物に適しています。
サンセリフ体(Sans-serif): 飾りのない直線的な書体です。ArialやHelvetica、Futuraなどがあります。「モダン」「効率」「親しみやすさ」「革新」を象徴し、WebサービスやITスタートアップのデザインで多用されます。
欧文専用フォントの絶対的な必要性
日本語フォント(MSゴシックやヒラギノなど)に含まれる英数字をそのまま英文に使用するのは、プロの現場では推奨されません。日本語フォントの英数字は、あくまで日本語と並べた時のバランスを優先して設計されているため、英文として連続した際の「カーニング(文字間隔)」や「xハイト(小文字の高さ)」が最適化されていないからです。 高品質な英語デザイン制作のためには、必ず定評のある欧文専用フォントを選定する必要があります。

左: 日本語フォント内の英字で組んだ、間延びして見える英文
右: 欧文専用フォント(例:Helvetica Neue)で適切にカーニングされた英文
原則2:テキストボリュームの膨張を制御する「スペース設計」
日本語の情報を英語に翻訳すると、文字数は一般的に1.5倍から2倍に膨らみます。これは、漢字が持つ表意文字としての情報密度が、アルファベットの表音文字を圧倒しているためです。
「1.5倍の法則」への対応策
日本語で完璧にレイアウトされたパンフレットに英語を流し込むと、文字が枠から溢れたり、文字サイズを極端に小さくせざるを得なくなります。これを防ぐためには、設計段階から以下の対応が必要です。
- 情報の取捨選択(編集): 翻訳された文章をそのまま載せるのではなく、デザインに合わせてコピーライティングを調整します。
- フレキシブルなグリッドシステム: 文字量が増えてもレイアウトが崩れないよう、可変性のあるグリッドを採用します。
- 行間の最適化: 英語は日本語よりも行間を広めに取ることで可読性が上がります。一般的にはフォントサイズの1.4倍〜1.6倍程度の行間が標準的です。

左: 情報が整然と詰まっている
右:テキスト量増加に伴い、余白を広げ、テキスト量と配置を調整している
特にパンフレット・マーケティング資料では、この余白の管理が資料の「読みやすさ」=「成約率」に直結します。
原則3:視覚的階層の構築
グローバル市場、特に欧米圏のユーザーは、情報をスキャンするように読みます。最初の一瞥で「自分に関係があるか」を判断させるためには、情報の優先順位を極端なほど明確にする必要があります。
視線誘導のパターン:Z型とF型
Z型パターン: 広告やランディングページなど、ビジュアル要素が強いページで、視線が左上→右上→左下→右下と動く流れ。
F型パターン: テキスト中心のブログや記事で、上部の見出しを読み、徐々に左端を下に降りていく流れ。
これらの動きに合わせて、最も重要なメッセージ(Headline)を最大級のサイズで配置し、補足情報(Body copy)とのコントラストを強烈につけます。日本語デザインで見られる「中くらいのサイズの文字を散りばめる」手法は、英語圏では「どこを見ていいか分からない」という混乱を招きます。
色の持つ文化的背景
色の解釈も国によって異なります。例えば「赤」は日本では「おめでたい」「情熱」ですが、海外では「危険」や「株価の下落」を強く想起させる場合があります。ターゲットとする市場において、その色がどのような感情を呼び起こすかを考慮した配色戦略が必要です。
実践テクニック:余白を「贅沢」に使う
英語デザインにおいて、余白は「空いているスペース」ではなく、「価値を際立たせるための演出」です。
高級ブランドの広告を思い浮かべてください。広い空間にポツンと置かれた製品と、洗練された1行のキャッチコピー。この余白の広さこそが、ブランドの自信と余裕、そして高価格帯であることを無言で伝えています。 逆に、隅々まで情報を詰め込みすぎると、グローバル市場では安価なディスカウント商品という印象を与えかねません。
会社案内・カタログを制作する際は、あえて語らないスペースを作ることで、情報の重要度を引き立てる技術が求められます。

左:日本のチラシのように情報が詰め込まれたデザイン
右:余白を活かしたミニマルなグローバルデザイン
成功する英語デザインプロジェクトの進め方
質の高い英語デザイン制作を実現するためには、制作フローそのものを見直す必要があります。
- コンセプトの言語化: ターゲットは米国なのか、アジア圏なのか、欧州なのか。地域によって好まれるトーン&マナーを定義します。
- コピー主導のデザイン: まず英語のコピーを確定させ、それに合わせてデザインを構築します。
- ネイティブ視点での構成: 制作の最終段階だけでなく、デザインの初期段階から「視覚的な違和感がないか」をネイティブの視点で構成・確認します。
modisデザインでは、こうしたプロセスをバイリンガルの専門チームが一貫してサポートすることで、お客様のブランドを世界基準へと引き上げます。
まとめ
英語デザインは、単なるスキルの問題ではなく、異文化を理解し、その文脈に合わせたコミュニケーションを再定義するプロセスです。
- 適切なタイポグラフィでブランドの「品格」を伝える。
- 膨らむテキスト量を予測し、美しいリズムを維持する。
- 大胆な余白とコントラストで、迷わせない視覚階層を作る。
これらの原則を積み重ねることで、貴社のビジネスは初めて世界中の顧客と対等に、そして深くつながることができます。
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